就職活動

就職活動をしてから、足の指が醜くなった。具体的に言うと、靴ずれによる傷が絶えず、左足の親指の爪が鬱血している。多分パンプスが足に合っていないのだと思う。22歳になってもいまだにローファーを愛用しており、5センチとはいえヒールのある革靴で長距離を歩くことに、就職活動が解禁してから4ヶ月目に突入してもなお私の足は慣れることが出来ないようであった。

「一つだけ不安なのはね、この適性検査だとちょっと、社交性に欠けてるんだよね」
先日受けた適性検査の回答表をめくりながら、人事は「休みの日とか何してるの?」と続けた。私は直近の休みの出来事を思い出そうとして、喫茶店で皿を洗ったり、スナックでサラリーマンの愚痴を聞いたり、スーパーでレモンジーナの試飲会をしたり、何日かの連勤の記憶を遡ってようやく知人と車で海とバッティングセンターに行ったことを思い出した。確か3週間前の日曜日であった。
少しの事実と過剰な嘘を織り交ぜた私の回答に人事は満足したようで、「ソフト部だったもんね〜」と適当な相槌を打ったあと、「3つもアルバイト掛け持ちしてるから友達とちゃんと遊んでるか不安になっちゃったんだよね、でも楽しそうでよかった!」と笑顔を見せた。私は乾いた笑顔で応じた。バカでブスで女と三拍子揃った私にとって、唯一の武器が愛想の良さであった。次の面接が最終なので頑張って、と言った後に今日の結果は電話でお知らせしますと人事は続けた。頑張ってと言ったんだから責任をもって最終に進めてほしいと思いながら、私は就活サイトに書いてあったとおりに礼をいい、頭を下げ、退室した。足の痛みとは対照的に、面接には慣れつつある自分がいた。これ以上慣れたくない。内定がほしい。

浜松からバスを乗り継いで、仙台に着いたのは土曜日の昼だった。すぐにストッキングを脱ぎ捨て、足の指に絆創膏を巻きつけながら、明日の日曜日の予定を考える。日曜日が休みなのは実に3週間ぶりのことであった。一日中泥のように眠ることにした。