挽く

22年間でいくつかのアルバイトを経験してきた。公文式の採点に始まり、引っ越し業者(十日でやめた)、古着屋店員(お洒落な人が来るような店ではなく、おばさんが引き出しの奥から何十年ぶりに引っぱり出してきた洋服をゴミ袋に大量に詰め込んで持ち込んでくる…

続き

新浦安の朝は暑かった。7時には既に太陽の光と熱が部屋の中で圧倒的な存在感を放っていた。私は普段見ることのないめざましテレビと、部屋の主である友人が化粧をし、髪を整え、服を着替える様子を代わりばんこに眺めていた。私が夜歯ぎしりをしなかったかど…

日記

福島の道路は濡れていて、道行く人の半分は傘をさし、もう半分はささずに歩いていた。雲は梅雨らしく厚くたちこめて、私は傘を持たなかったことをほんの少し後悔した。 新幹線の良い所は、当たり前だけどとにかく速いことだ。椅子に座ってじっとしているだけ…

ルーティン

世間一般の飲み会がどうなのかは知らないけれど、私が友人と飲む時のほとんどはどこで何時間飲むのかは最初は決まっていない。とりあえず集合し(仙台駅前であることが多い)、ふらふらと歩き(たいてい西口のアーケードだ)、それなりの店に入り、それなりに飲…

慣れ

慣れとは恐ろしいものだ。数日前に気付いた違和感が、いつの間にか日常として馴染んでしまう。違和感の原因を突き止める前に、本能で感覚を違和感の方へ合わせてしまう。慣れとは感覚における一種の麻痺状態なのかもしれない。夏風邪をこじらせて声が出なく…

美容院

美容院は苦手だった。苦痛と言ったほうが適切かもしれない。とにかく、美容師というのは明るくお喋りな人がほとんどで(中には苦手なのを無理して頑張っている人もいるのかもしれないがそういう性格の人はわざわざこの職業は選ばないと思う)、私のような陰…

才能

たった一つだけ私には才能がある。どんなにつまらないアニメでも視聴し続けるという才能である。俗に言われるアニメを「切る」という行為をあまりしない。これはひとえに兄の教育の賜物であると言えるであろう。いち早く私の才能に気が付いた兄によるエリー…

就職活動

就職活動をしてから、足の指が醜くなった。具体的に言うと、靴ずれによる傷が絶えず、左足の親指の爪が鬱血している。多分パンプスが足に合っていないのだと思う。22歳になってもいまだにローファーを愛用しており、5センチとはいえヒールのある革靴で長距離…