ネムルバカ

三ヶ月ぶりの仙台は、例年より確かに暑いように感じられた。道は空いており、道路には煙草の吸殻がこびりついてたり、ストロングゼロを手にした浮浪者が座り込んだりしていなかった。迎えに来てくれた友人二人は、例年通り肌を露出した服を着ており、片方はノースリーブのワンピース、片方はレザーのミニスカートという格好だった。私は白いシャツに白のコットンパンツを履いて巨大なボストンバッグを抱えていたので、さながら長年入院していたサナトリウムから退院したばかりの疾患者のようだった。三人で並んで歩く姿がショーウィンドウにうつると、我ながらすごい組み合わせだなと笑ってしまった。


この二日で五人の友人と会い、酒を飲みながらーもしくはお茶をしばきながらー色んな話をした。その中で一番興味深い話をしたのが、レザーのミニスカートを履きこなすギャルだった。彼女はいつも素っ頓狂な事を言うが、その考えに至るまでの過程を聞くと思わず納得させられる根拠があり、私はそんな彼女の話を聞くのが好きだった。彼女も私に話をするのは面白いようで、側から見れば両極端の見た目な私達は意外と長い付き合いになっている。


正月も彼女とせり鍋を食べたお馴染みの居酒屋へ行くと、意外と店内は空いていた。お馴染みの緑茶ハイが来ると、お馴染みの恋人へ溜まった不平不満を話し始めた。彼女が恋人に一生許さないけど結婚したい、と打ち明けると、恋人が一生許さない相手となぜ結婚できるのか分からない、と返事をした事にかなり腹を立てていた。私も彼女が言っていることは全く分からなかった。「彼のした事は一生許したくないけど、でもここで私が彼と別れて、彼が私との反省を踏まえて新しい恋愛をうまく進めるのが納得いかないの。だから、結婚して一生一緒になることが、一生許さないことと同義になるの」彼女は煙草の火を揉み消して、納得したでしょと微笑み、私はそうだねと思わず頷いていた。やっぱり彼女の考え方は素っ頓狂で、そしてかわいい。