オタク

気持ち悪いオタクであることを急遽思い出したので、知人と新海誠の新作「君の名は。」を見てきた。劇場内はオタクよりも中高生やカップルの比率が高いように見受けられ、若干の居心地の悪さを感じつつも、新海誠もここまで認知されたのだなあと感慨深くなった。作品内の全音楽がRADだったこともこの視聴者層に大いに起因しているとは思うけれど、それにしてもひと昔前まで「星を追う子ども」でオタクたちに袋叩きにされていた監督の作品とは思えないほどの盛況っぷりだった。後半は涙腺が崩壊し―年を取るにつれ輪を掛けて胃腸と涙腺が弱くなった―視聴後は涙でグチョグチョの顔面のまま感想をぶちまけようとしたところを知人に化粧室に行くよう勧められ、人前に出ても許される程度の顔面に立て直したところでやっと素晴らしいという感想を交わしあうことが出来た。新海誠の作品といえば、路地裏の窓だの新聞の隅だので好きだった人の幻影を探してしまうような、綺麗な作画とは裏腹になんとも言えない余韻(よく"切ない"と表現されているのを見るけれど、もう切なさすら通り越して具合が悪くなるほどの後味)に浸らされるものが多いのだけれど、今回は実に爽やかな、タイトルどおりの結末だった。もうすでに各所で感想や批判(これだけの作品でも批判が必ず転がっているあたり、まだまだ粗探しが好きなオタクが元気に生きていることを実感させられる)がされているので、いちいち深い感想はここでは述べないことにする。ただ、ちらっと見かけた「ヒロインが最後ほかの男と同棲か結婚していたら最高だった」というツイートには、確かにそちらのほうが新海誠っぽいなあと笑ってしまった。

 

気持ち悪いオタクなので、視聴後はすぐに窓口に並びパンフレットを購入した。上映前から各所でインタビューされていたとおり、今までの経験を最大限に活用してより幅広い層に受け入れてもらえるような作品を作った、と新海監督は述べていた。その狙い通り、この作品は間違いなく彼の代表作と呼べるものになったと思う。インタビュー記事を読みながら、私は全く違う監督のインタビューを思い出した。それはWake Up,Girls!劇場版後編btbの―例により気持ちが悪いオタクなので視聴後すぐに購入した―パンフレットに書かれていた。今なにかと話題にされている山本監督は、なぜテレビアニメではなく映画という形をとったのかという質問に対し、「不特定多数の視聴者ではなく、WUGを応援するために劇場まで足を運ぶファンに限定して作品作りをすることで、より深い作品を作りたかった」という旨の返答をしていた。今彼は主にツイッターやブログを駆使して、そのファンすら含む大多数のオタクによく思われないような発言を繰り返している。オタクの言い分にも極端なものは多数見られ、かといってそれにいちいち言葉遊びのように反論する山本監督にも賛同できず、私は傍観者の位置に徹してそれを眺めている。ただ、監督なら監督らしく、言いたいことは作品に込めればよいと思う。やたらとバラエティに出る作家や、ライブのMCが長い歌手が私は嫌いだ。今回新海の言いたいことは確実に作品を通して伝わってきた。一般人を相手に言葉遊びのような発言を繰り返すよりは、オタクが度肝を抜かすような作品をまた作ってくれれば良いのになあと思う。ちなみに今このブログはWake Up,Girls!2nd Tour「行ったり来たりしてごめんね!」ライブTシャツ(XL)を着ながら書いています(気持ち悪いオタクなので)。